« 【Q】奇形の出現は確率的にやむをえない? | トップページ | 【Q】大腸菌の中でヒトのDNAが正しく複製できるのはなぜ »

2006年6月 7日 (水)

【Q】遺伝子はどうやってヒトの形をコントロールしているのか

 カフェで、手をつくる遺伝子の話をしてくれた遠藤さんからのお答えです。

Q: (形をつくるDNAに寄せて)ホックスDやAなどのタンパク質はどのくらいの違いで目に見える違いを生じるのでしょうか?コントロールする方法は今のところないのでしょうか?(コメ)

A: 例えばヒトの手足の長さに見られる個人差は、ここで言う「目に見える違い」になるかと思います。しかし「手足の長さの個人差」が「ホックスの働き方の差」によるのかは、分かっていません。
 ヒトの場合、受精後2ヶ月くらいまでには大人と同じ形の手足が完成しています。しかしこの時の体長は数センチで、手足の長さも1センチあるかどうか、と言ったところでしょう。ホックスが手足を作るために働いているのは、これよりもさらに前の時期です。ヒトはこの小さな手足を、何年もかけて何百倍もの大きさの大人の手足に成長させていきます。この時の成長差の方が、個人差に直接影響するのではないかと思います。
 ホックスが働く体の中の領域を変化させることで、ホックスの役割を理解しようとする研究が現在たくさん行われています。しかし今のところ、ホックスをコントロールして、自由自在に好きな形の体を作ることには、誰も成功していません。
 逆に意図せずにホックスの働きを邪魔してしまったために、体に障害が出てしまったと思われる事例はたくさんあります。サリドマイド事件は、その一例です。1998年にアメリカの著名な発生生物学者テービン博士は、「サリドマイドとは、ホックスの働く場所を乱すことで、手足の奇形を作ってしまうのではないか?」という説を発表しました。妊婦の摂取した薬・サリドマイドによって、胎児の手足の発生速度が変化し、それによってホックスの働きが乱れてしまったではないか、と言うのです。実際には、サリドマイドが手足の奇形を誘導するまでの仕組みは、未だに分かっていません。しかしこの説にはかなりの説得力があります。
 生き物は人間が想像も付かないほどの精密な仕組みを駆使し、その体を作っていきます。それをコントロールしようなどとは、考えない方がいいのかもしれません。(遠藤)

 ヒトのからだをつくる遺伝子のはたらきがわかってくると、どうしてもそれを利用して、スタイルの良いからだを作れないか、というような意見が出てきますが、基礎研究でわかってきたことを安易に「利用」してやろうなどと考えると、まだわかっていないしくみにより思わぬ副作用が生じることがよくあるものです。
 何かがわかったとしても、それはほんの一部であるという謙虚な気持ちが大切だということでしょうか。

|

« 【Q】奇形の出現は確率的にやむをえない? | トップページ | 【Q】大腸菌の中でヒトのDNAが正しく複製できるのはなぜ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/64130/2116418

この記事へのトラックバック一覧です: 【Q】遺伝子はどうやってヒトの形をコントロールしているのか:

« 【Q】奇形の出現は確率的にやむをえない? | トップページ | 【Q】大腸菌の中でヒトのDNAが正しく複製できるのはなぜ »