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2006年3月18日 (土)

【Q】このまま時がたつと今の人間から別のDNAをもつ新人間のような集団が将来現れますか

 さて、今回はDNAの変化を追いかけて生物の進化を研究している原田愛さんが、ヒトの進化についての質問に答えます。

Q: このまま時がたつと今の人間から別のDNAをもつ新人間のような集団が将来現れますか(A)

A: <ヒトの種分化の可能性について>

 DNAは親から子へと受け継がれていきます。しかし長い時間のなかでは少しずつ変化しています。その変化の積み重ねで、その生物の形が変化したり、新しい種が現れたりします。

 さて、Aさんの質問は、現在の人がネアンデルタール人から別れてきたように、現在の人から新しいヒトが生まれるかどうか、ということでしょうか。残念ながらその可能性はごく低いと思われます。現在の生物学では、新しい種ができるときには、もともとの種と新しい種でDNAが共有されなくなることが必要だと考えられています。たとえば、ある生き物の生息地を分断するように川ができて2つのグループの間にDNAの交流(=交配)がなくなると、長い時間が経つうちに互いのDNAは変化してきます。分断が長期にわたると、その2つのグループは、再び出会っても交雑できない(=こどもができない)くらいに変化していることが予想されます。こうして新しい種がうまれると考えられています。では、ヒトではどうでしょう?大昔はそうではありませんでしたが、現在では世界中で交流が盛んです。国際結婚も少なくありません。つまり、ヒトという集団は遺伝子の共有がされなくなるとは考えにくいのです。したがって、(今の文明が続く限りは、)新しいヒトが生まれる可能性はごく低いのです。

<「DNA」が遺伝子という意味だとして。>

 DNAは親から子へと受け継がれていきます。しかし長い時間のなかでは少しずつ変化しています。その変化の積み重ねで、その生物の形が変化したり、新しい種が現れたりします。

 さて、Aさんの質問は、新しい遺伝子をもったヒトが今のヒトから現れるかどうか、ということでしょうか。検討しなければならないことは2つあります。1つは、そのような遺伝子が現れるかどうか、2つめは、その遺伝子をもつ人が増えるかどうか、です。

 先に述べたように、DNAは少しずつ変化しています。もともとは1つだった遺伝子が2つになったり、もともとあった遺伝子が新しいはたらきをするようになったりすることが知られています。今の人間でも、長い時間をかければ遺伝子が変化したり、新しいはたらきをする遺伝子をもつようになるかもしれません。(ただし、いくら脚が長い方がいいな、と願っていても、遺伝子が変化して脚が長くなることはありません。←いらない?)

 つぎに、その遺伝子をもつ人が増えるかどうか、です。結論から言ってしまいますと、その遺伝子によります。人間の生存に有利な遺伝子ならば、(時間はかかりますが)多くの人がその遺伝子をもつようになるでしょう。反対に害のある遺伝子、有利でもないし害にもならない遺伝子では、多くの人がその遺伝子をもつようになることはほとんどないといえます。

 また、以下のことを付け加えておきます。現代っ子の体型は変化したと言いますが、それは食生活や住環境の変化のためであって、ゲノムに急激な変化が起きたわけではありません。それと同じように、遺伝子の変化が関わらなくても見た目がかわって、「新人間」が現れることはありえるでしょう。(原田)

 ちょっと長かったかも知れませんね。実は、この後にさらに付録として、ATGC以外のDNAを持つヒトが進化してくるかどうかという質問にも答えています。

A:  地球上の生物はすべて、例外なく、ATGCの4つの塩基のDNAをもっています。この4種類の組み合わせで、それぞれの生き物の、単純な体から複雑な体までつくりあげています。Aさんの質問は、このATGC以外の塩基をもったDNAをもったヒトがあらわれるか、ということでしょうか?
 DNAの性質として親から子へ受け継がれること、があります。これはDNAの2重らせんの一方を型とし、もう一方をそれに合うようにつくっていくというDNAの複製の仕方に由来します。つまり、DNAを複製するにはその型となるDNAが必要なのです。(そうすると、DNAは変化しないように思えますが、DNAを複製するときのミスや有性生殖(子どもができるのに母親と父親が必要)などで少しずつ変化していきます。その変化の積み重ねで、形が変化したり、新しい種が生まれたりします。←いらない?)
 したがって、人間も親から子へとずうっとDNAでつながっていることを考えると、新しいDNAが使われる余地は、現在の生物ではありえないでしょう。(原田)

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2006年3月17日 (金)

【Q】ノックアウトマウスのノックアウトとは何ですか?

 今回は、カフェで脊椎動物の前足の発生と進化のお話をしてくれた遠藤哲也さんです。

Q: ノックアウトマウスのノックアウトとは何ですか?(霧夜)

A: 日本語で言うと「遺伝子破壊」と言うことになると思います。ゲノム上のある特定の遺伝子を狙って、ボクシングで相手をノックアウトするように破壊することです(ボクシングで「相手を破壊」などというと、少し怖いですが)。実際の研究では、ある遺伝子を働かなくした(破壊・ノックアウトした)動物がどんな症状を示すか調べることで、その遺伝子が通常はどんな働きをしているかを理解するために用いられます。逆に何かの遺伝子を人為的にゲノムの中に入れるノックインという技術も存在します。
 これらの技術によって、遺伝子の働きを探る研究は飛躍的に進歩しました。特に遺伝子ノックアウト技術は、遺伝子の働きがおかしくなることで生じる遺伝病やガンの研究に、大きく貢献しています。ES細胞を応用してこの技術を開発した米国のマリオ・カペッキ博士は、1996年京都賞を受賞し、現在ではノーベル賞候補とも言われているそうです。(遠藤)

 丁寧に読むとわかると思いますが、もしもわからないことがあったら、再質問してください。

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2006年3月16日 (木)

【Q】DNAによって性格が形づくられることはあるんですか?

 お答えシリーズ第2弾です。今回は、天敵の存在を知ってからだにトゲをはやすミジンコの研究をしている楢木佑佳さんが答えます。

Q: DNAによって性格が形づくられる(部分的にでも)ことはあるんですか?(華)

A: DNA(遺伝子)にできることは、タンパク質を作ることです。
 手足を作るときのような、性格をつくるタンパク質というのはないはずです。一方、脳の中で感情のコントロールに関わっているタンパク質はいくつか見つかっています。これらのタンパク質をつくる遺伝子のはたらき方が遺伝的に決まっているなら、明るい、おとなしい、好奇心旺盛、怖がり、などの大まかな性格はDNAによって作られるといえるかもしれません。しかし、その場合も、いくつかの遺伝子のはたらきが組み合わさってひとつの性質を生み出す、というようになっていると思います。
 イヌでは品種によって性格が異なるといいます。イヌの品種は人の手で近親交配を繰り返して作られたので、ゲノムが均一に近い状態です。そのため、同じ品種であれば感情をコントロールする遺伝子がみな同じようなはたらき方をしているのかもしれません。
 ヒトの場合は何世代にもわたってゲノムが混ざりにまざっていますし、学習能力も高いです。また、ヒトに限らず、遺伝子のはたらき方は環境に合わせて変化したりもします。なので、ヒトの性格がつくられるときには、DNAより育つ環境の方が影響力は大きいだろうというのが私の考えです。(楢木)

 いかがでしょう。確かに、ある遺伝子を持っていると凶暴な性格になるとか、世話好きになるとか、そういうことがあったらおもしろいかもしれませんが、そんな遺伝子はありません。性格が遺伝する(遺伝子に支配されている)という証拠もないのです。そもそも「性格」そのものを科学的に定義することも難しいです。温厚な性格の人が突然暴力を振るったとしたら、「温厚なのに暴力を振るった」のか「温厚だと思っていたのに実は粗暴だった」のか、どちらが正しいと思いますか。

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【Q】「わかさいも」はどさんこのDNAというのは本当ですか?

 当日の質問カードにお答えするシリーズを始めたいと思います。まずは【DNAラーメン】さんからの質問に「いろいろな名前の遺伝子」のお話を提供してくれたファシリテーターの川本思心さんが答えます。

Q: 「わかさいも」はどさんこのDNAというのは本当ですか?DNAラーメン

A: DNAとは、その生き物が、その生き物であるために必要不可欠なものです。どさんこにもいろいろいるので、一概には言えませんが、「わかさいも」がなけければ道民であることに自信が持てない、生きていけない、そして子々孫々まで3時のおやつは「わかさいも」で決まりだ、というのであれば、やはりそのようなどさんこにとって「わかさいも」はDNAのようなものかもしれません。
 でも、どさんこでも「わかさいも?あーあんまり好きじゃないんだよね。」という人もいるかもしれません。だとしたら『「わかさいも」はどさんこのDNAのようなものだ』と言うよりは、『「わかさいも」は「わかさいも」が好きな人のDNAのようなものだ』と言うのが正確になるでしょう。
 日常的に使われる時には、DNAという言葉は必ずしも遺伝子のことを示さないこともありますね。「日本人のDNA」とかだったら、遺伝子の意味も含まれるかもしれませんが、「トヨタのDNA」とか「ものづくり職人のDNA」とか、親子でも親戚でもない人達の間に受け継がれる慣習とか精神のことを示しているように思われることもあります。(川本)

 でも、せっかく「今さら聞ける!?DNA」でいろいろ学んだ後では、あまりいい加減な使い方はしないでおきたいものですね(^^)。

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2006年3月14日 (火)

今さら聞ける!?おすすめ本(2)

 昨日ご紹介した、「今さら聞ける!?おすすめ本」に続いて第2弾。ディレクター・スピーカー・ファシリテーター・スーパーバイザーから皆さまへの選りすぐったおすすめ本です。よろしかったら図書館ででもごらんください。今回も、新しいものから順に並べてあります。私が関係した本が最初にきたのは、たまたまですので、ご理解を ^^;)。

新しい高校生物の教科書 Book 新しい高校生物の教科書

著者:栃内 新,左巻 健男
販売元:講談社
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遺伝子と病気のしくみ Book 遺伝子と病気のしくみ

著者:生田 哲
販売元:日本実業出版社
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崩れるゲノムの常識  別冊日経サイエンス146 Book 崩れるゲノムの常識 別冊日経サイエンス146

販売元:日経サイエンス
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マンガでわかる最新ポストゲノム100の鍵 Book マンガでわかる最新ポストゲノム100の鍵

著者:石田 まき,野島 博
販売元:化学同人
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新しい発生生物学―生命の神秘が集約された「発生」の驚異 Book 新しい発生生物学―生命の神秘が集約された「発生」の驚異

著者:木下 圭,浅島 誠
販売元:講談社
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ポストゲノム時代の医薬革新  別冊日経サイエンス139 Book ポストゲノム時代の医薬革新 別冊日経サイエンス139

販売元:日経サイエンス
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生命の設計図―その仕組みと正しい読み方 Book 生命の設計図―その仕組みと正しい読み方

著者:田沼 靖一,コールドスプリングハーバー研究所,ヤン ウィトコウスキー,デイビッド スチュワート,ローリー グッドマン
販売元:ニュートンプレス
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絵でわかるゲノム・遺伝子・DNA Book 絵でわかるゲノム・遺伝子・DNA

著者:中込 弥男
販売元:講談社
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遺伝子組み換えとクローン Book 遺伝子組み換えとクローン

著者:大石 正道
販売元:ナツメ社
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DNAとの対話―遺伝子たちが明かす人間社会の本質 Book DNAとの対話―遺伝子たちが明かす人間社会の本質

著者:ロバート ポラック
販売元:早川書房
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ミジンコ―その生態と湖沼環境問題 Book ミジンコ―その生態と湖沼環境問題

著者:花里 孝幸
販売元:名古屋大学出版会
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ゲノムを読む―人間を知るために Book ゲノムを読む―人間を知るために

著者:松原 謙一,中村 桂子
販売元:紀伊國屋書店
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Book
からだの設計図―プラナリアからヒトまで
著者 岡田 節人
販売元 岩波書店
定価(税込) ¥ 672

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2006年3月13日 (月)

今さら聞ける!?おすすめ本

 カフェ当日の配付資料に載っていた、おすすめ本です。新しいもの順に、再掲します。

ヒトの遺伝の100不思議 Book ヒトの遺伝の100不思議

著者:左巻 恵美子,栃内 新,阿部 哲也,巽 純子,日外 政男
販売元:東京書籍
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免疫学個人授業 Book 免疫学個人授業

著者:多田 富雄,南 伸坊
販売元:新潮社
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イヴの七人の娘たち Book イヴの七人の娘たち

著者:ブライアン サイクス
販売元:ソニーマガジンズ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

Book

 子どもにきちんと答えられる遺伝子Q&A100―遺伝のしくみからクローンまで
著者 美宅 成樹
販売元 講談社

生物学個人授業 Book 生物学個人授業

著者:岡田 節人,南 伸坊
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

Book

 あなたのなかのDNA―必ずわかる遺伝子の話

著者:中村 桂子
販売元:早川書房
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Book DNAの冒険―ことばと人間を自然科学する

著者 トランスナショナルカレッジオブレックス
販売元 言語交流研究所ヒッポファミリークラブ

DNAからみた生物の爆発的進化 Book DNAからみた生物の爆発的進化

著者:宮田 隆
販売元:岩波書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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お役立ちウェブサイト

 サイエンス・カフェ札幌「今さら聞ける!?DNA」スタッフが精選した、サポートサイトです。質問するより、自分で調べる方が好きという方はほとんどの答を見つけることができるかもしれません。

 また、そちらで感じた疑問をこちらへ持ってこられても構いません。

 レッツ・スタディ!

遺伝学電子博物館(国立遺伝学研究所)

DNAってなに?(かずさDNA研究所)

JT生命誌研究館

JSTバーチャル科学館の中にある ヒトゲノムがひらく未来

 

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