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2006年4月 1日 (土)

【Q】1番長いDNAを持っている生き物は何ですか?

 今回もまたおもしろ遺伝子の紹介をしてくれた川本さんが答えてくれます。

Q: 1番長いDNAを持っている生き物は何ですか?(モリキン)

A: DNAの長さとは、すべての塩基をならべた数、つまりゲノム量ということになりますが、これはゲノムがほぼ解読されないと、当然どれくらいあるのかわかりません。また、ゲノムが解読されている生き物も、されていない生き物もいます。ですから、「今の時点でゲノムが解読されている生き物のなかで、一番長いDNAを持っている生き物は何か」という問に対する答えになります。
 その生き物は、Fritillaria assyriacaという、ユリの仲間の植物です。総塩基数が1200億あります。ヒトが30億、ショウジョウバエが1億8000万ですからずいぶん長いですね。ユリとヒトとハエのゲノム量はずいぶん違いますが、遺伝子(実際にタンパク質になって働く塩基の部分)の数はそれほど変わらないと考えられています。その代わり、ユリでは遺伝子以外の部分が多くなっています。つまり、ゲノム量と生き物の複雑さは、常に直接的な関係があるというわけではない、と考えられています。
 一方、大腸菌の総塩基数は460万、λファージ(大腸菌に感染するウィルス)は4万8000で、ずいぶん少ないです。
 シンプルな体のため、遺伝子の数が少なくてすむということもありますが、総塩基のほぼすべてが遺伝子であるということもその理由からです。λファージでは、自分の遺伝子だけではなく、感染した大腸菌の遺伝子を使うことまでします。DNAの長さも、使われ方も生き物によっていろいろある、ということですね。(川本)

 30億の塩基対を持つDNAの長さは総延長が約2メートルということですから、ここで出てきたユリのDNAは総延長が80メートルにもなるのですね。それが目にも見えない細胞の中にあるさらに小さな核の中に折り畳まれているのですから、すごいものです。

 動物では、両生類の中でも尾のあるイモリやサンショウウオの仲間のDNAが多いと言われています。

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2006年3月30日 (木)

シンポジウム関連の話題

 3月17日のエントリー「【Q】ノックアウトマウスのノックアウトとは何ですか?」に、3月18日のシンポジウムに関連したコメントがあります。サイエンスカフェに関する、とても大切な議論がされておりますので、ぜひともごらんください。

 とは思いましたが、中村さんからのアドバイスによりまして、ここに再録することにしました。

 場違いなコメントです。 失礼。
 今日、COSTEPのシンポジュームに参加してきました。 「サイエンスカフェ、最多得点」おめでとう御座います。 コメンテータの皆様から「目的が・・・」と言うコメントがありましたが、いささか疑問を感じました。 そもそも、科学に興味を抱くのに、普遍的、ないしは意図された目的があるのでしょうか? あるとすれば、極めて個人的な「探究心」のように思います。 そう言った、探求心を率直に表現し、「同じ思いの人が居る」、「こうしたアプローチの仕方がある」と言う見本を示すので十分ではないでしょうか? その結果として、社会に何かを伝えようと言う意欲、社会の問題点を訴えようとする人が少しでも勇気付けられれば良いと思うのですが。 コミュニケータ(コミニュケータではありませんね?)の役割は何処を目指すのでしょうか?
投稿 hero | 2006/03/18 21:44:54


 heroさん、コメントありがとうございます。ならびに、今日のシンポジウムに参加していただけたということ、感激です。サイエンス・カフェでの出会いが、ここまで発展するとは正直いって思ってもいませんでした。ところが、今日は懇親会の席でも「カフェ仲間」に会うことができ、感動していたところです。カフェってすごい!
 さて、コメンテーターの方からなかなか厳しいお言葉をいただいたのは事実です。heroさんのおっしゃるように「何もそこまで」という意見もごもっともだと思いますが、私としてはあのコメントは我々主催者側に対して「たとえうまくいったからといって、調子に乗ってはいけませんよ」という戒めの言葉だと思っています。たとえ意図を持ってやったとしても、たまたま集まったたくさんの人を意図のように動かすことなどできません。カフェというものは、あくまでも我々と参加された市民の皆さんがその場で作る即興作品だと思います。コミュニケーターというものは、その即興劇の舞台を用意する裏方というのが最低限の役割でしょうか。目的を持って誘導しようなどと思った瞬間に失敗が約束されているようなものだと思います。
投稿 栃内 | 2006/03/18 22:59:44


 

CoSTEPの教育スタッフの一人として,サイエンス・カフェの制作を含む「科学技術プレゼンテーション実習」を担当しています。heroさん,昨日は発表会・シンポジウムへのご参加,またコメントありがとうございます。 サイエンス・カフェに関していえば,私も,栃内さんの書かれているとおり,即興劇のプロデューサー,演出家,裏方といったところがコミュニケーターの基本的役割だと考えています(もちろん,3月10日のカフェでの,栃内さん,中村さん,メインスピーカー,ファシリテーターの皆さんのように,「俳優」として舞台に立つという役目もありだと思います)。こうした「演出」や「演技」を通じて,よく知らない人同士(“専門家”“市民” etc.)が出会い,科学技術をめぐって対話する場を創出することが,コミュニケーターの仕事になると思います。どうしてカフェをやるのかという「目的」(この場合,個人的にはあまり好きな言葉ではないのですが)を問われれば,このような次元で答えるしかないような気がしています。
投稿 三上 | 2006/03/19 7:37:08


 私はサイエンスカフェに何回かボランティアで参加させてもらっている大学院生です。
 私は1月にあったワークショップでのトム・シェイクスピアさんのお話がすごく印象的に残っています。トム・シェイクスピアさんはイギリスにおけるサイエンスカフェの第一人者です。シェイクスピアさんは話の中でサイエンスを文化の一つとして捉えていくこと、映画館や劇場に行くように気軽にサイエンスカフェに行くことを提案していました。 サイエンスコミュニケーターは科学の専門家ではない人が多いと思うので、特別な思想に偏っているわけでもなく中立的な立場で科学を楽しむことができる人達だと思っています。だから、何か難しいことを訴えるというよりも、歌ったり踊ったりするように、一つの自己表現の手段としてサイエンスカフェをやっても良いのではないかと私は感じています。私がボランティアをやっているのも、幾つか理由があっても、根本はカフェをやっていて気持ちが良いという理由からです。 映画もお芝居も面白くなかったら、お客さんは来なくなります。サイエンスカフェだって面白くなかったらお客さんは来ないし、カフェの場でも盛り上がらないと思います。その点で言えば札幌のサイエンスカフェは大盛況でしたし、文化として確立していくことも夢ではないような気がしています。
投稿 mutumi | 2006/03/20 23:15:47


 ここで話されていること、とても大事な話だと思いました。関連意見を「シンポジウム関連の話題」のエントリーにTBしました。
 ♪栃内先生へ 「ノックアウトマウスのエントリー」を別日程で入れなおすという手があります。で、ここのエントリーをシンポジウム関連にしてしまうとか。ノックアウトマウスに関するコメント(まだ入ってませんが)とシンポジウム関連コメントが混在しなくていいかもしれません。ご依頼いただければ私の方で作業しますが。
投稿 中村 | 2006/03/23 10:31:08

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2006年3月29日 (水)

【Q】DNAと遺伝子は同じ?ゲノムとDNAは同じ?

 栃内です。

 今日もまた、ひとつお答えしてみましょう。

Q: DNAと遺伝子は同じ?ゲノムとDNAは同じ?(M子)

A: DNAというのはD(デオキシリボ)N(ニュークレイック:核の)A(アシッド:酸)という長い名前を持つ物質の頭文字を取った略称です。日本語で、デオキシリボ核酸ということもあります。この物質が遺伝子の「本体」であることが、わかっています。つまり、DNAが遺伝子の材料ということです。
 細胞の核の中にあるすべてのDNAのことをゲノムといいます。DNAで大切なのはDNAの部品であるATGCという塩基と呼ばれる物質の並び方ですから、ゲノムというのは核にあるDNAのすべての塩基配列情報ということもできます。DNAの塩基配列が意味する情報のことを遺伝情報と言うこともあります。遺伝情報のすべてが解明されているわけではないのですが、その情報のうちタンパク質を作る暗号になっている部分と、そのまま働くRNA:リボソームRNAなどを作る暗号になっている部分を特に区別して「遺伝子」と呼ぶことが多いようです。
 ただし、専門家によってはその言葉の使い方が異なることもしばしばあって、ゲノム全体のことを遺伝子と言ったり、DNAのことを遺伝子と言ったりする場合もありますので、ちょっとだけ注意しておいたほうが良いと思います。

 でも、あまり細かいことに気を遣わずに、DNAが遺伝子を作っていることと、核(細胞)の中のDNAのすべてをゲノムというというくらいに思っておけば良いと思います。

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2006年3月27日 (月)

【Q】DNA、遺伝、クローン、ES細胞

 さて、いよいよお待ちかねの杉尾さんの登場です。切っても斬っても、全身を再生することのできる不思議なヤマトヒメミミズの研究の話をした人です。

Q1: DNAと遺伝の関係が知りたい(タニさん)

A1: 「親の姿・形や性質(形質)が親から子に受け継がれること」を遺伝と言います(新しい高校生物の教科書・引用)。
 昔、子が親に似ている理由は赤と白の色水を混ぜたらピンク色の液体ができるように、親の体液が混ぜ合わさることによって両方の親の特徴を持った子供が産まれると考えられていました。しかし、メンデルの研究により親から子に伝わるものは液体ではなく、粒のような独立した数えられる物質であることがわかり、その後の研究でそれが染色体上に存在すること、染色体はDNAのかたまりであることが明らかになりました。現在では、生物には姿・形・性質を作り出す情報が書かれているDNAのセットが2つあり、そのうちどちらかを父親から、もう1つを母親から受け継ぐことによって、子は親から特徴を受け継ぐことがわかっています。(杉尾)


Q2: クローン(?)と関係はあるの?(タニさん)

A2: クローンとは、全く同じ遺伝情報を持ったもののことを言います。遺伝情報とはDNAの塩基配列のことです。クローンという言葉は、厳密には個体レベル・細胞レベル・遺伝子レベルで少し異なった意味で用いられています。
 個体レベルでは、クローンは親(もとになる個体)と全く同じ遺伝情報を持つ個体を示します。クローン人間やクローン羊などはよく耳にするクローンだと思いますが、身近なところでは挿し木や株分けで増やした植物もクローンと呼ばれます。私が研究で使っているヤマトヒメミミズも1匹を10個に切ったら10匹のミミズになるので、クローンです。
 細胞レベルで、クローンは1個の細胞から分裂してできた細胞集団のことを言います。このような細胞のクローンは均一な性質を持った細胞集団であるため、実験材料としてとても役に立っています。
 遺伝子レベルでは、特定の遺伝子(DNA)を増やしてできたコピーのことを言います。大腸菌を用いてヒトのインスリンを作るとき、ヒトのインスリン遺伝子を大腸菌に入れてから、大腸菌を培養して増やします。大腸菌が増えるとヒトのインスリン遺伝子も増えるので、この増えた遺伝子のことをクローンと言います。
 個体レベル・細胞レベル・遺伝子レベルで使い方が少し違いますが、いずれも、もととなるもののコピーであるような均一の集団のことを指しています。(杉尾)


Q3: ES細胞との関係は?(タニさん)

A3: 私たちの身体はもともと受精卵という1つの細胞からできています。受精卵から始まって完全な身体ができるまでを発生、または胚発生と言います。胚とは受精後に細胞分裂を始めてから独立して栄養摂取できるまでの状態のことを指します。
 発生が始まってまもなくは、胚の細胞はどんな細胞にもなることができる可能性を持っています。遺伝子は身体を作るための設計図であるので、発生初期の細胞はたくさんの遺伝子も働かせることができる(たくさんの設計図を開くことができる)状態にあります。しかし、発生が進むと開くことができる設計図が制限されていきます。なぜなら、いくら細胞が身体をつくるための全ての設計図を持っているからといって、指先に肝臓ができたり、頭の中に心臓ができたりしては困るからです。神経になる細胞は神経を作る設計図のみを開き、他の設計図を開けなくする必要があるのです。
 では、ES細胞はどんな細胞かと言うと、ES細胞は将来胎盤を作る細胞群と胎児を作る細胞群とに胚の細胞の運命が分かれた直後の胚から、胎児を作る細胞を取り出して培養したものです。つまり、ES細胞は胎児を作るための設計図を全部開くことができる細胞なので、理論上すべての細胞になることができます。現在では、ES細胞の培養条件を変えることで目的の細胞を作り出すことができるため、病気や事故などで失った細胞や臓器をES細胞から作り出そうという再生治療が期待されています。(杉尾)

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【Q】染色体とダウン症の関係?

 このサイトを立ち上げてくださった中村さんからの回答が届きました。

Q: 染色体とダウン症の関係?(恵)

A: 当日司会進行をしていた中村・工学部(^.^;;出身です。 栃内先生のご指名により、この質問回答に挑戦いたします。

■ヒトの染色体の本数について
 ヒトの染色体は2本ずつ対に、大きい順に1番から22番まで番号が付いています。他に性染色体と呼ばれる2本があり、XXなら女、XYなら男となるように性別に関係しています。合わせると
  2本×22番+性染色体2本=46本
の染色体が、ヒトの細胞の核の中にあります。
 ところが、ヒトの体の中で卵子または精子だけは、46本の染色体を持った細胞が“減数分裂”という過程を経て、
  1本×22番+性染色体1本=23本
染色体が半数になっています。
 この23本の卵子と23本の精子が受精して受精卵となり、染色体が46本の細胞となり、胎内で細胞分裂を繰り返して成長して産まれてきます。

母親の細胞(46本)   父親の細胞(46本)
  ↓             ↓
減数分裂         減数分裂
  ↓             ↓
卵子(23本)→受精卵←精子(23本)
           ↓
         子(46本)

■ではダウン症のヒトの染色体の本数は?
 ときに、卵子または精子をつくりだす“減数分裂”の時に、染色体が23本より少なかったり多くなったりすることがあります。そのような卵子または精子が受精してもほとんどの場合、細胞は育たず死んでしまいます。ですが、21番の染色体が1本多い場合はその限りではありません。
 21番目の染色体が“減数分裂”の段階で1本に減らないで、2本ある卵子または精子がつくられることがあります。その卵子または精子が受精して、合わせて21番が3本あったとしても、受精卵は育ち出生することができます。

 ダウン症とは、染色体(21番)が1本多く、子の染色体が47本になっている場合を指します。

●卵子が24本の場合

卵子(24本)→  受精卵  ←精子(23本)
             ↓
           子(47本)

●精子が24本の場合

卵子(23本)→  受精卵  ←精子(24本)
             ↓
           子(47本)

 割合は少ないですが、受精卵が細胞分裂するときに21番染色体が3本となる場合もあります。
 産まれてきた子の多くは、心疾患や知的発達の遅れといった諸症状があり、総じて「ダウン症候群」と呼ばれています。“ダウン”というのは イギリスの医師ダウン博士の名前が由来だそうです。

 ここでさらに疑問に思われるのは、「なぜ21番が3本でも育つのか」、「減数分裂のしくみって?」でしょうか(中村)。

 中村さんが工学部出身だって、はじめて知りました。そう言えば、こういう生殖医療関係の分野は生殖工学と呼ばれることもありますね。

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