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2006年5月 8日 (月)

【Q】最新のDNA型判定について

 これは特に質問があったというよりは、カフェ主催者内部で説明を追加しておいたほうが良いという意見が出てきて書かれたものです。

 最新の捜査現場で使われているDNAの型判定について、川本さんが調査してくれました。

Q: 最新のDNA型判定について教えてください(nobody)

A:  かつて日本の警察では、「配列多型」と呼ぶ塩基配列そのものの違いに注目してDNAの型を鑑定していました。前の記事にあるHLADQα型による鑑定はこの方法です。しかしこの方法はさまざまな理由から、現在では使われていません。Stras_1
 現在使われているのは、塩基配列の長さの違いによる「鎖長多型」による鑑定です。前の記事にあるMCT118型とTH01型はこちらによる鑑定で、この方法は現在でも使われています。 この方法では、ゲノム上のあちこちにある数個から~十数個からなる特定の塩基配列(*1)がくり返されている部分に注目しています。実はこの繰り返しの回数は人によって異なっているため、それを比較することで個人や親子の鑑定を行うことができるのです(図参照)。

Strbs  繰り返されている塩基配列は1種類ではなく、複数が知られており、それぞれについて鑑定を行うことで、鑑定の精度を高めることができます。現在使われている繰り返し配列は10種類あり、すべてを比較すると他人とDNA型が一致する危険性は、一番よくある型の場合でも、数億人に一人程度の割合に下がっているそうです。最高裁判所もMCT118を用いたDNA型鑑定の技術的有効性を認めています(*2)。

 さらに今後、日本の警察は、DNA型鑑定に使用する塩基配列の種類を16種類に増やすそうです(*3)。また、男性のみにあるY染色体上の17種の塩基配列を調べる方法も、メーカーによって開発されています(*4)。これらの方法を使うことになると、DNA型が他人と一致する可能性はかぎりなく0に近づくでしょう。

 しかし、もちろん0ということではないので、他人と一致してしまう可能性は絶無ではありませんが、かつて4種類の方法しか鑑定に使っていなかった時に比べると、はるかに精度が上がっていますが、現場からとられたサンプルの破損が激しかったり、複数の人のDNAが含まれていたり、というサンプル上の問題などが残されています。いくらDNA型鑑定の技術がその精度を高めていっても、ある人が犯人である、ということに関しての「精度」を直接上げるものではありません。たとえDNA型鑑定を利用したとしても、その他の証拠との連携が重要であり、従来の捜査の基本が変わるわけではないのです。(川本)

*1: 鎖長多型による鑑定に用いられる塩基配列には、大きく分けて二種類ある。
VNTR (Variable Number of Tandem Repeat):十数塩基の基本グループがあり、それがくり返されている塩基配列。MCT118がこれにあたる。基本グループが長いため、塩基配列が壊れる確率が高く、状態の良くないサンプルでは鑑定できない場合もある。
STR(Short Tandem Repeat): 2~4塩基の基本グループがくり返されている塩基配列。TH01がこれにあたる。比較的状態の良くないサンプルからでも安定した実験結果がでる、という利点などがあり、現在の鑑定の主流となっている。
*2: 2000年7月17日第二小法廷決定(刑集54巻6号550頁) 鹿児島大学大学院司法政策研究科刑事訴訟法研究室(助教授)中島宏
http://www.ceres.dti.ne.jp/~h-nakaji/hanji1776.html
*3: 「DNA 型鑑定による個人識別の歴史・現状・課題」 岡田薫
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200601_660/066002.pdf
*4: アプライドバイオシステム 公式web site
http://www.appliedbiosystems.co.jp/website/jp/product/modelpage.jsp?MODELCD=883&PLCD=38&BUCD=1160)

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